邦画

オムニバス映画「Jam Films」

北村龍平・篠原哲雄・飯田譲治・岩井俊二・望月六郎・行定勲・堤幸彦の7監督が撮った短いフィルムを集めた作品集。

いいものを見たと思った。

すべてを気に入ったわけではないけれど、刺激的であり、表現というものに深く触れられた気がしたので、見て良かった。それがまず初めの感想。

 

短いからこそ

短いからこそ、きちんと「起承転結」を分かりやすくつけているものが多く、その、ストーリーやネタで勝負するぞという姿勢が良かった。

エンターテイメントを馬鹿にしてはいけない、ということを、痛感した作品集だった(もともと馬鹿になどしていないけれどね)。

表面的でチープだけれど、その分、単純に娯楽として楽しめる……そういうのも大切。

いざっていうとき(?)、そういう作品を作れない人間はダメだな、なんてことを思った。

 

そういう意味で、篠原哲雄の「けん玉」と、飯田譲治の「コールド・スリープ」は成功していたと思う。

ただ、二人の他の作品を見ていないので、これで二人の持ち味が存分に出せていたのか、それは分からない。

 

望月六郎作品の多面性

癖はあって、好みは分かれるだろうけれど、自分のツボにはまったのは、望月六郎の「Pandora」。完全に「世界」ができあがっていて、惹きつけられた。

ものすごくエッチな作品とも見られるし、美しい芸術なのだとも見られるし、独特のアイディアで勝負している娯楽作品とも見られる。その多面性がすごい。

普通のエッチなビデオも、こういうセンス、勉強して欲しい(笑) どうも男の人が見るエッチなビデオは、センスがなさすぎて、興ざめだ……。

 

逆に、「これはどうなの?」と思ったのは、北村龍平の「the messenger」と、行定勲の「JUSTICE」。

特に私は、行定勲の「GO」がとても好きだったので(それを見て、窪塚くんのファンになったくらい)、「えええええ? これだけ? 短いからって手抜きしなかった?」とどうしても思ってしまった。ただこれも、望月六郎の作品のように、好みが分かれる作品で、その良さを私が分からなかったというだけか?

北村龍平は、多分、何見ても好きになれないだろうなという気がした。ただ、ところどころ映像は美しかった。

 

岩井俊二は別格

ただ、やはり、なんといっても、岩井俊二でしょう。もう、この人、すばらしいっ。ほんと、大好きです(一番好きなのは「リリイ・シュシュのすべて」)。

他の作品も良かったし、それぞれ「個性」があったのだけれど、なぜか岩井さんの個性だけは、全く別の次元。

他の人の作品は、見ている間も、「作られたものを見ている」という意識があったのだけれど、岩井さんの作品は気づくともう、その世界の中に入っている。

「ARITA」と、「ARITAはいると信じる女性」と、二つの存在が当たり前のように心に入ってくる。「分からせよう」とすごんでいない。だからこそ、見ている方も、すんなり気持ちよくそれを受け入れられる。

岩井さんはこの映像を撮るとき、広末涼子と二人だけで撮ったこともあり、かなり時間をかけていた、などという話を以前聞いたことがあったが、それは「距離を縮める」ためではなく、「距離の意識を消す」ためだったのだろうと感じられた。

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