一ヶ月くらい野ばらさんの本を読んでいなかったので、なんだか「久しぶり」に読んだ気がした。
野ばらさんの本は、すっとしみてきて、読みやすく、本当に好きだ。
ただ今回はあとがきでも書いてあるけれど、設定を全く考えずに書き始めたということで、それはそれでありなのだろうとは思うのだけれど、ちょっと出来の悪い推理小説みたいなどんでん返しがあって、そのあたりはいまいち。
全体として青・水のイメージで書かれているのだけれど、自分が「青」「水」にものすごく惹かれ、こだわっている人間なので、さらりとこうやって書かれてしまうと、ちょっと物足りなさを覚えるのも確か。ま、なんか偉そうなこと言ってしまっていますが……。
そういう野ばらさんにしてはどこか浅い感じがするのと、心地よい感じのイメージを表層的に描いている部分があるからか、読んでいてなぜか本多孝好を思い出した(ま、どちらも好きなのでいいのですが)。
「あとがき」がいい
この本にはとっても長い「あとがき」がついている。そこにはこの本を書くきっかけになった絵との出会いと、その画家の人生についてが書かれている。
作品よりあとがきの方が良かったなんて、作家に対してとても失礼な言葉だけれど、この本に限って言えば、正直、そうだった。
あとがきを読んでいたら、その画家の人生とか、その魂が野ばらさんを通して表現したかったこととかが伝わってきて、なんだか泣けてきてしまった。
でも、「あとがき」はあくまで、本を読んで最後に読むべきもの。是非、この本を初めからきちんと読んで(短いのでさらりと読める)、「あとがき」もじっくり読んでみて欲しい。
不思議な本と出会った感じがした。