吉田修一「パレード」を読んだ。
今まで、芥川賞を獲った「パーク・ライフ」しか読んだことがなかったので、これが二作目。
Contents
吉田修一にはまる
「パーク・ライフ」を読んだときは、「なんでこれが芥川賞なんだよ?!」というような感じでも、逆に「分かるよ、この世界観!」という感じでもなく、ただ「へぇ、こういうのもありかぁ」とだけ思った。
で、吉田修一という作家をつかんだ気になって、他の作品を手に取る気分にはならなかった。
でも、「パレード」は読んで良かった!
すごい、この人、こんなに上手いんだ、という衝撃を受けた。
この作品は山本周五郎賞を獲っているらしいが、本当、読んだ後、賞をあげずにはいられなくなるような優れた作品だと思う。
(追記:このあと、結構、吉田修一にはハマった。ANAの冊子に載せていたエッセイはANAに乗ったら必ず読んでいたな)
楽しい「表」からたまに覗く「裏」のバランス
内容は2LDKのマンションの一室に、男女5人が共同生活を送っているという設定で、それぞれの視点で、計5作の短編が書かれ、それが一つの物語の形になっているというもの。
スムーズに読めるし、時々思わず笑ってしまうほど楽しめる。エンターテイメント性も充分だ。
でも、読んでいるうちに、その軽やかさ、楽しさは表面的なものであるということが伝わってくる。
一人ひとりの人物は、他の人の視点で描かれると、薄っぺらい今時の若者に見えるのだけれど、視点人物になり、その内面が見えるようになると、急に深みや厚みがでてくる。
「表」の世界を描きながら、時々その「表」が途切れ、「裏」がのぞき見える。それくらいの書き方。
書き込まないことで深くなる。リアルなのに遠い、不思議な世界観を絶妙なバランスで見せている。
楽しく読めるのだけれど、その表面的なものの奥にある世界が垣間見られると、なんだかぞっとしてしまう。
最後の章の衝撃が、本当、すごい。
かなりおすすめの本。
また吉田修一の本を読みたくなった。