よしもとばなな

よしもとばなな「王国」

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「王国1」「王国2」と続けて読んだ。

 最近のばななさんは、とぎすまされてきた感じ。無駄なものをどんどんそぎ落として、本当に伝えたいことだけストレートに書いているなっていう感じがする。エッセイと同じようにストーリーを物語るというより、「思想を語る」といったところが強くなってきている気はするけれど、ばななさんはもともと他の小説家とは一線を画する存在だったから、求められている方向でどんどん突っ走っているのだろう、と、そのどこか吹っ切れた感じが好ましく感じられる。

 最近のエッセイを読むと、現実の色々な問題に苦しめられているらしいことが分かるのだけれど、そういうなかで等身大の一人の人間として考え、悩んだことが、もっと普遍的なテーマになって、人に語りかけられているという感じがする。

「王国1」のなかで、「自分のせいだと自分を責めることはいずれ、自分の力だとうぬぼれることになるからやめたほうがいい」とか、「神様には言葉がないから、代わりに自分があいだに立って伝えているに過ぎない」とかそんな感じの言葉がある。ばななさんは「小説を書く」ということを、そういう作業だと認識しているのだろうなと感じられた。それは素敵なことだなと思う。そして実際、ばななさんの言葉は、多くの人に届いているのだろうと感じられ、それを想像すると、私の心まであたたかくなる。私も、もっとハートウォーミング系の作品を書かねばいけない、なんて刺激されたり(笑)

「王国2」も良かった。2では、慣れない一人きりの生活の中でテレビを見過ぎてしまうようになったとき、おばあちゃんから手紙が来るのだけれど、その内容が良かった。テレビや文明を批判するのではなく、どう折り合いをつけていくか、しっかりとその言葉は語っている。そして最後の方にこう書かれている。

「そして何よりも罪悪感を持たないでください。弱い自分に、ちょっとしたことで変化してしまった自分に。(略)反省して生活を変えるのは大いにけっこうなのですが、罪悪感は、その、退屈な淋しさにとっての、おいしい餌のようなものです」

 正直、分かったようで分からないのだけれど、なんだかいい言葉だなと思った。

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