それ以外の本

「ダ・ヴィンチ」7月号

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 文学賞の特集をしているからおすすめということで買ってみた。時々立ち読みはするけれど、買ったのは初めてかも。でも読んでみるとなかなかおもしろい。作家のインタビューがこんなにたくさん読めるなんて多分他にはないだろうし。

 文学賞については、「こういう一覧は取っておくと便利かも」とは思ったものの、今まで色々研究してきている私には、ほとんどが当然の内容だった。でも、「これから応募してみようかな」と思っている人にはとても親切なんじゃないかなと思う。

 私はこの号で一番おもしろいと感じたのは、文学賞を受賞した作家の言葉と、瀬尾さんのインタビュー。

 心に残った文章を引用。

「(賞に応募するときは、その媒体が何を求めているかを、リサーチすることが大事)もし入賞したら、自分がその媒体で仕事をすることになるわけだから、そういう目線で見ていくと、見えてくるものがあると思います」(中島たい子さん)

 さすが大人の言葉だと思った。出版社系の賞に送るという行為はこう考えると、入社試験に似ているわけだ。

「今年3月に出した『泣かない女はいない』は、この年に『文藝』に出して二次落ちした作品で、芥川賞受賞後に『文學界』に見せたときもボツになった。その都度改稿したけれど、いつかこうして世に出せる。目先の落選で落ち込んだり、その一作に拘泥することはないわけですよ」(長嶋有さん)

 この台詞の前に長嶋さんの応募戦歴が載っているのだけれど、6年ぐらい『文学界』に出し続け、一次落ち、一次通過、二次通過と経て、ようやく受賞したらしい。ちょっと励まされる経歴。私もデビューした暁には、世の「予選落ち」を繰り返している人のためにも、自分を落とした賞の一覧でも公開してみようと思った(笑)

 あと心に残り、いいなと思ったのは瀬尾さんのこんな一言。

「たとえば男子生徒が(誰かが落とした)消しゴムを拾ってあげてるとか。そんな瞬間に“あ、コレ書きたい”って思うんです。胸がざわついたりしたようなときに。だから、私はこういう気持ちになるような作業をしたいんだって。誰かに届けたいとまでは思ってないけれど、こういう感覚を作ったりするのが好きなんだって、分かってきたんです」

 あぁ、やっぱり瀬尾さんは、何気なくさりげない人の温かさを受け止めて、それを作品にしている人なのだなと改めて思い、なんだか良かった。

 見開き一ページの短いインタビューだけれど、一つ一つの言葉が等身大で、柔らかくて、あぁ瀬尾さん、素敵、と思ってしまった。

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