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「人のセックスを笑うな」山崎ナオコーラ

この題名は成功しているのか失敗しているのか......。やはりそのあたりが気になってしまう。

正直、この作品はこのタイトルでなければ受賞しなかっただろう(これは去年の「文藝賞」受賞作)。でも、このタイトルからすごい内容(?)を期待して手に取ってしまうと、「なんだ......」と肩すかしをくらう。

もしタイトルがごく普通のものだったら、「あっさりしているけれど爽やかで、気持ちも分かるし、なんといっても読みやすくていいね」と言われるだろうに、変に期待させるから、「大したことないなぁ」と思われてしまうのだ、多分。

 

一番の長所は読みやすさ

内容は、19才の美術専門校の男子生徒と39才の結婚している美人でもない先生の恋愛、というもので、そう珍しい感じてもない。ストーリーの運び方も、主人公「オレ」の感じることもごく普通。

長さも多分原稿用紙150枚弱くらいなのだろう。一冊の本にはなっているが、一ページの文字数も少ないし、改行も一行空きも多いし、視覚的にも軽く、すかすかな感じがする。

だから読みやすいというものあるけれど、物足りないというのもある。

 

でもやっぱりこの作品の一番いいところを挙げろと言われたら、「読みやすい」その一言に尽きる。

短さもあるだろうけれど、それだけではなく、多分技術なのだろうな。最近思うけれど、読みやすい文体というのは強力な武器だ。特に昨今の、「活字離れ」が叫ばれる一方で若者が小説を書き始め、「コミック世代」と言われる年代が進出するようになった世では。

 

自分の文章も決して読みにくい方だとは思っていないけれど、やはり自分の癖は色濃く出ているし、人に言わせると、「慣れれば味だと思えるけれど、初めはちょっと鬱陶しく思われるかも」というものになっているらしい。

 

読みやすい作品はさらりと読み終わってしまい、なかなか分析する余裕もないのだけれど、そういう作品ほど手元に置いて何度も読んで、読みやすさとはどういうところから生まれるのかしっかり見ていかないといけないのかもしれないな。

 

正直内容的には、読み終わっても特になにも心に残らない、薄っぺらい印象で、「こういうので受賞できるのは運が良いよな」とか「タイトルが命のものもあるのね」とか言いたい気もするけれど、ま、そんなふうにひがんでいても仕方がないので、とにかく謙虚に学ぶ姿勢でいたいね。

今回は「読みやすい文体は大切」「タイトルのインパクトも重要な武器」ということを学べたので、充分です。

次は、この作品と同時に受賞した「野ブタ。をプロデュース」も図書館の順番が回ってきたので、それも読んで感想を書きたいと思います。

人のセックスを笑うな人のセックスを笑うな

 

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