恩田さんの作品は正直あまり好みではないのだけれど、マイミクさんに「現実の力を感じる」と勧められ、読んでみた(もちろん、実話ではないけれど、この行事自体が実際にあるということ)。
実際にある行事のリアリティ
確かに以前読んだ「ネバーランド」より作品の中に入り込めた。
多分私が恩田さんの作品を苦手なのは、漫画っぽい(と言ったら、漫画に失礼かもしれないけれど)作られた感じが全体に漂っているからだと思うけれど、それが「夜のピクニック」という行事の「リアリティ」によって薄められているのは確かだった。
ところどころに、「こんな人いる?」という「作りました」という感じのキャラクターも出てきたりはするのだけれど、主要な男子2人、女子2人には好感を持てた。
ただひたすら歩くというのは、そんな大きく景色が変わることもないだろうし、朝・昼・夜の違いとか、体の疲れ具合くらいしか書くことがなさそうなのに、それでもこれだけの長さを書き切れてしまうというのはやっぱり力なのだろう。
正直、もっとそぎ落とせる部分はたくさんあるのでは、とも思ったけれど、この「ただひたすら歩く」というこの行事の雰囲気を出すにはこういう描き方はありだとも思う。
もし恩田さんがそういうすべてのことを計算してやっているのだったら、それはすごい。
私の小説仲間にはこういう作品を好きな人はあまりいなさそうだけれど、若い子とか、軽く読めてさわやかな気持ちになれる本が読みたい、という人にはお勧め。
小説の内容に直接は関係ないけれど、表紙の絵は好きだな。
こういうシルエットの絵がたまにページの片隅に載っているのも良かった。
夜のピクニック 恩田 陸
新潮社 2006-09 |