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湊かなえ「告白」

1年ほど前に話題になり、今もベストセラーであり続ける本「告白」を、遅ればせながら読んだ。

 

小説推理新人賞受賞作+5作品

6つの短編集だけれど、それぞれの短編はつながっていて、全部で一つの作品になっている。

ただ、1話目の「聖職者」が、「小説推理新人賞受賞作」ということなので、もともとは原稿用紙100枚弱の長さだった短編が完結した作品で、そこに、あと5話を付け加えていったということなのだろう。

1年ほど前から話題になっている本だから、ずっと気になってはいたのだけれど、読んでみたら、思っていたのとは大分違った。

ただ、非常にうまいし、新しいな、と思った。なるほど、こういう作品が、新人賞を獲るんだな、と納得できる感じ。

でも、こういう作品が「売れる」というのは、ちょっと意外にも思えた。

なんというか、ちょっとマニアックで、コアなファンをつかみそうな感じの作品に思える。

 

作品がすべて一人の人の会話内容

1話目は、終了式の日、担任の先生が生徒に最後に話をする、というもの。「最後に話をするシーン」などではなく、「最後の話」そのものが作品になっている。

つまり、原稿用紙100枚近い長さが、すべて「一つの台詞」ということ。

 

私が不勉強なのかもしれないけれど、一つの台詞だけで完成する小説というのは初めて読み、すごいな、と思った。純文学ならまだ分かるけれど、「推理小説」の受賞作なのに、と。

しかもアイディア以上に、それだけで読ませてしまう力量がすごい。

 

その「独白」のなかで、ある「事件」の話になり、その事件の犯人の話になり、その「犯人」がどうしてそういう行動に及んだかの経緯の話になり、そして、最後、衝撃の一言につながる。

「おぉ......そうくるか」という感じ。

ただ、決して後味はよくない。

 

つながっているようで、前の話を潰していっているようでもある

2話以降は、多分1話が受賞したあと、付け足されていったものなのだろうけれど、読んでいくと、6話すべてでようやく完成する作品のようにも思える。

それも湊さんの「力」だろう。

1話ずつ、つながっているようで、前の話を潰していっているようでもある。

1話だけで世界が完結していると思うと、その作られた世界が、あとの話で崩されていく。

その感覚もまたおもしろい。

前にも書いたように、決して心地よい読後感ではないし、嫌な気分が残るのだけれど、またなにか思いついたときにこの人の本は手にとってしまうだろうな、と思う。

 

純粋に読者として読む場合は、好き嫌いが別れそうなので、「気になったら読んで」くらいだけれど、小説を書く人にはお勧めしたい本だ。

告白告白

 

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