近所の映画館で、IMAXが導入された記念と、次回作公開前の周知を兼ねて「IMAX新海誠特集」をしていて、IMAXで「秒速5センチメートル」を見てきた!
他に「君の名は。」「天気の子」も上映されているので、都合がついたらそれも観たいのだけど、まずは映画館で見たことがなかった「秒速5センチメートル」を選んでみた。
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美しさを味わえるのは「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」
新海誠「言の葉の庭」:描写とストーリーの絶妙なバランスという記事で書いているのだけれど、やっぱり私が新海作品で一番好きなのは「言の葉の庭」だ。
なぜかというと、「適度なストーリーが“見る人を飽きさせず”、でも美しい描写を味わえる“余裕”を提供していて、ものすごく私好みのバランス」だから。
「天気の子」くらいエンタメ、アクション要素を詰め込んでしまうと、せっかくの新海作品の美しい描写を味わう余裕がなくなってしまうと思っていて。
(だから繰り返し見るんだよ、とファンには言われるかもだけど。私は強いストーリーのある作品では、心静かに描写を味わえないかな)
そういう論理でいくと、「言の葉の庭」の次に好みなのは「秒速5センチメートル」になる。
「秒速5センチメートル」の内容と構成
「秒速5センチメートル」は、3話からなる、小説でいうなら「連作短編」みたいな作品。
1話目は……
東京の小学校の同級生だった男女がお互い心を通わせあうも、女の子は小学校卒業のタイミングで栃木に引っ越すことになり、離れ離れになってしまう。
中学になってから文通だけはしていたものの、会うことはなかったが、今度は男の子の方が中二になるのを機に鹿児島(種子島)に引っ越すことになり、東京と栃木という距離の間に会おうと、3月4日に栃木で会う約束をする。
でもその日は3月なのに雪になり、電車は遅れに遅れ、ついには止まり、待ち合わせの19時に全然間に合わない。……そういう話。
第1話はその「雪の中止まる電車」の描写が多い。小学生の頃の話もその「止まっている電車」のなかで男の子が回想する形になっている。
「新宿に一人で来たのも初めて」という中学一年生の「雪の中で立ち往生する電車で一人待つ」心細さを考えると、胸がいっぱいになる。
2話目は……
種子島に越し、高校生になった1話目の男の子を一途に思う同級生の女の子の話。
視点人物が変わり、さらに男の子は肝心なことはほとんど話さないから、主人公の女の子は第1話の物語のことは当然ながら知らない。
でも、好きで好きでたまらない男の子は、ずっとここにいない誰か他の人に常に心を飛ばしている。それだけは分かる。その切なさがテーマ。
現実的にはあり得ないけれど、男の子の背景には頻繁に星雲のような星空が広がっていて、女の子にとってその男の子の存在がとても遠いことを表している(多分)。
種子島という宇宙とつながりの深い場所が舞台なのが効いている。
3話目は……
大人になった第1話・第2話の男の子の視点で描かれる話。
第3話はまとめ的な感じで、内容はあまりない。
主人公は、「先へ進まなきゃ」という焦燥感に急かされるようにがむしゃらに仕事を頑張ってきたものの、心が疲弊し、仕事を辞めた。その時点だということだけが分かる。
その彼が第一話に出てきたような踏切で女性とすれ違う。はっとした彼は、踏切を渡り終えてから振り返るが、通り過ぎる電車に視界を遮られる。
電車が去ったあと、そこには……。という話。
なんとなく、「君の名は。」で主人公2人が実際に出会い、すれ違い、振り返るシーンを思い出す。
あれは、このシーンの“リベンジ”的役割だったのだろうか、とか。
美しいけれど、苦しい
多分、一番描写が美しく、味わえるのは「秒速5センチメートル」だと思う。
背景の美しさとストーリーのもたらす切なさも非常に相性がいい。
ただ……切なすぎる。
それで心がしんどくなるので、「言の葉の庭」ほど頻繁には見られない……だから私の中で「2位」になっているのだと思う。
第1話で2人はものすごい運命の相手みたいな感じなのに、それは視点人物であった男性の勘違いだったということなのかな。
私は第1話で感情移入しすぎて、第2話の女の子には、「うん、無理だと思うから、あきらめよう」と思っちゃうのだけど、他の人は第2話でも切なくなるのかな。
1話とラストが切ない。
でもこういう余韻は好きだ。
ということで、「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」は見たことなかったら、是非見てみて欲しい!
映画館で見られたらより良いけれど、テレビでも、タブレットでもスマホでも、いいものはいいから!!
「言の葉の庭」も映画館で上映してほしいなぁ~。
そして、映画館で映画を見るってやっぱりいいな、と思った。
『秒速5センチメートル』