去年の「すばる文学賞」、前回の芥川賞を獲った作品。
まぁ、今更説明するまでもないというくらい、話題になった本だけれど、ようやく読んでみる気になった。
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読ませる力のある作品
芥川賞を獲ったときのインタビューなどから、綿矢さんよりも深い視点を持っている人だなという気はしていたが、読んでみて、その印象は外れていなかったと思った。
好きか嫌いかと聞かれたら決して好きなタイプの本ではない。それでも充分読ませる力のある作品で、「最年少の芥川賞作家」とか「20歳ほどの若くてかわいい女の子」が書いたものというイメージは途中からなくなり、純粋に「作品」として対峙することができた。
若者らしい文体がテーマに合っている
確かに文体とか書き方には、若者らしさがある。ただ、それが描き出したいテーマや世界観ととても合っている。素直に、上手いなぁと思った。
生きていくことなんてどうでもいい、とか、冷めた投げやりな視点と書き方のなかにさりげなく、でもしっかりとテーマが書き込まれている。
主人公と自分に何の共通点もないのだけれど、最後には主人公の心の痛みが、伝わってきた。ことさら丁寧にその感情が書き込まれているわけでもなく、ものすごくストレートな表現なのに、なぜか深く。
あぁ、この人は「作家」として生きている人だなと思った。
受け付けられない人もいると思うけれど、読んでみて損はないと思う。自分でも文章を書いている人なら特に。さりげなくおすすめ(笑)