凪良さんの本、3冊目。
タイトルと表紙の雰囲気から、ほのぼのとした世界を期待していたのだけれど、意外とダークな面も多い作品だった。
でも、凪良さんらしさは作品全体に感じられ、これも良い本だった。
Contents
物語は……
物語の舞台は、「すみれ荘」というまかないつきの下宿。
身体が弱く、定職に就けない30代男性の主人公が、親から引継ぎ、その下宿のオーナー兼お世話役をしている。
(本全体を通して、主人公は「定職に就けない自分なんか」的評価を下し続けるのだけれど、具合が悪い日も下宿人全員の予定に合わせ、食事を用意するって、充分な労働の気がする。……のは、私の“労働”が楽すぎるからでしょうか💦)
この本も連作短編のような形になっていて、一人ひとりの住民が各回主要人物になっていくのだけれど、視点人物は「すみれ荘」オーナーのまま変わらないのが面白い。
それぞれの話で、一人ひとりの裏の面とか、ダークな部分が見えてくるのだけれど、それでも人は人のことを完全には理解しきれないということかな、とも思う。
吉田修一『パレード』に似ている
この、一見明るく健全に見える住人たちが、それぞれダークな部分を持っているという設定と物語の展開は、吉田修一の『パレード』に似ているなと思った。
『パレード』はよりダークで、最後衝撃を受ける、お薦め作品。
でも、同じテーマで書いても、当然、書く人が違うと、人物設定とか、キーとなってくる物事とか変わってくる。
つまり、勝負すべきは、やっぱり自分らしさなんだなぁ、などと思ったり。
私は凪良さんの作品は『流浪の月』『わたしの美しい庭』が一押しだけど、この作品の方が「先が気になる」エンタメ性は高い。
だからあまり小説を普段読まない人には、この『すみれ荘 ファミリア』の方がとっつきやすいかもしれない。
とにかく今私は凪良さん推しなので、何か気になる作品があったら、是非読んでみてください♪
凪良ゆう
『すみれ荘ファミリア』