映画(さ行)

河瀬直美「沙羅双樹」

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 一月ぐらい前に見た映画だけれど、来週ぐらいで公開が終わりだと新聞に出ていたので、その前にとりあえず書こうかと。
 
 監督の河瀬直美さんは、『萌の朱雀』(1997)で、カンヌ映画祭新人賞(カメラドール)を史上最年少で受賞し、とても話題になった人。

 今回の作品では、監督本人がかなり重要な役をやっていて、その分、『萌の朱雀』の方が良かったように思えてしまったけれど、新聞を読んだら、撮影の直前にその役をするはずの女優が病に倒れ、「撮影の準備はしてあるのだから、日程は変更しない」という意志だけで、自分がその役を演じちゃったという……。いやぁ、すごい。役者の経験があるのかは知らないけれど、なんだかそれなりに上手く、臨場感があった。
 
 ただやっていることはパワフルなのだけれど、作品は淡々としている。日常を切り取っている。でも、「小津的」とは言われないだろうな。この人がすごいのは、やはり「独自の路線」を突っ走っているところにある。あんまりたくさん映画を見ていないのかもしれない。私の好きな作家の吉本ばななさんも、「小説はほとんど読まない」と言っているし、「知らない」ということが、時には武器になったりするからおもしろい。

 「独自の路線」を突っ走るには、なんといっても、「自信」が必要だ。でも、人の評価や理解がないと、「自信」ってなかなか持続しないものだなと思う。多分、どんなに精神的に強い人でも、周りから全く認められないと、「自信」は消耗していく。だから、独自の路線をいく河瀬さんをすごいなとは思うけれど、駆け出しのころに周りに認められたことが幸せだったのだろうとも感じてしまう。

「自信」というのは「人の評価だ」なんて言ったら、そんなことはないと言う人もいるだろうけれど、八割方はそうだよ、と私なんかは思う。そして残りの二割にしても、子供のころ周りの人にどれだけ認められ、愛されてきたかが体に染みつき残っているのではないかという気がする。

 と、脱線したけれど、河瀬さんの作品は、一度は見てもらいたいもの。見ると、静かだけれど鮮やかな映像や世界が心にしっかりと刻まれる。それが心地よい。 次の作品は、一つの作品を見て気に入ったら見ればいい。多分、似たような世界が次も繰り広げられていくだろうから。ただ、似ているけれど、少しずつエネルギッシュになっていくかもしれない。

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