凪良さんの作品4冊目。
あいだに一冊他の作家の本を読んだけれど、それ以外すっかり凪良さんづいている。
Contents
切ない
この本は、一番切ない。
『流浪の月』も結構切ないけれど、それでも二人の世界は絶対で、温かかった。
でもこの本は、「二人」の関係さえ、いつ壊れるか分からないほど脆く見える。
なぜなら、主人公の旦那さんは死んでいるから。
主人公は、亡くなった旦那さんの幽霊と暮らしている。
主人公には旦那さんが見え、話せ、触れることもできる。
でも、他の人は誰も見えない。
そして、ご飯を食べているように見えるのに、食べたはずのご飯はそのまま残っている。
たまに見えなくても、旦那さんの幽霊がいるということを信じてくれる人もいる。
でも、ごくわずか。
そして、そういう人でさえ、旦那さんの幽霊は見えないし、声は聞こえない。
幽霊は本当にいるのか。自分が頭の中で作り出したただの幻なのではないか。
いや、違う。ちゃんといる。
……そう何度も自問自答を繰り返さないと成立しない日々。
切ない。
「人に理解されない関係」のバリエーション
『神様のビオトープ』も連作短編集。
プロローグとエピローグを除くと4つの話で構成されているのだけれど、その話のなかには、「人に理解されない関係」が色々なバリエーションで描かれる。
例えば2話目の「マタ会オウネ」は、クラスメートよりも科学者の父が作ったロボットと仲良くなり、そのロボットが唯一の親友だと言う男の子が出てくる。
3話目の「植物性ロミオ」では、10歳の女の子と大学生の恋愛が描かれる。
そもそも「幽霊と暮らす主人公」自体も、人に理解されない存在だ。
『流浪の月』も「少女誘拐犯(とみられている男)と誘拐された元少女」という「人に理解されない関係」をテーマに描かれたものだし、元々ボーイズラブ出身の凪良さんにとって、そこは永遠のテーマなのだろうな。
人には理解されない。でも自分たちはそれでいいと思っている関係。……それは、それでいいのか?と。
(凪良さんは、「いい」と言っているように思う)
そして、「親切なふりして、分かったようなことを言う人の迷惑さ」も凪良さんのなかで、かなり強いテーマなのではないかと思う。
でも本当、同性愛に限らず、こんなに「人に理解されない関係」って作り出そうと思えば作り出せるんだなぁ、と……凪良さん、すごい! と思った。4冊目まで来て。
好きやこだわりを突き詰める
なんか似たようなことばかり書いていると、「これしか書けないんじゃないか、と思われないだろうか」みたいに恐れちゃったりするけれど、自分が好きなこととか、こだわりある部分を徹底的に突き詰めていって、幅広いバリエーションにするって、いいな。
一人の作家の作品を続けて四冊読んでみて、今回本当、勉強になった。
試しにちょっと読んでみた凪良さんのボーイズラブ作品は、ちょっと挫折しそうだけど……でももう一冊ノーマルジャンルの本が残っているはずなので、また読みたい。
凪良ゆう
『神様のビオトープ』