過去Diary

灯り

 この頃、暗闇のベンチに一人で座って、夕涼みをするのが好きだ。マンションの真ん中にある、広場のようなところで、ぼんやりと時を過ごす。嫌なことも、すごく嬉しかったことも、そこでは消え去って、ただ穏やかな気持ちになる。幸せって、こういう心のことを言うのか、と思う。
 
 マンションの灯りだけが、優しく点っている。人が、家族が、そこで暮らしている。そのことだけで、妙に安心できる。
 
 私にも、帰れば食事を用意して、私のことを待っていてくれる「家族」がいる。弟は今年から金沢に行ってしまったけれど、変わらず仲良くやっている。私には、大切な友達も、私のことを必要としてくれる生徒も、来年から私を受け入れてくれる会社もある。
 
 でも、なぜか一人で、マンションの灯りという、人の幸福を遠くから眺めているときが、一番幸せのような気がする。
 
 ひねくれ者。もっと、大切な人に、大切だと思っていると伝えなきゃ。
 
 別に、心配事があって、心が安まらない、というわけではない。でも、なぜか、今いるこの場所が、本当に私のいるべき場所なのか、分からなくなったりする。満ち足りているのに、淋しさを感じるとき、誰になんの相談もできなくて、一番やりきれなくなる気がする。
 
 なぜ、あの灯りは、こんなにも私の心を埋めてくれるのだろう。どうして、こんなに優しい気持ちにさせてくれるのだろう。食事時の家族の会話。テレビの音。私の前を通り過ぎる、犬を散歩させている人たち。帰路につく高校生たち。どこか懐かしく、温かい。そんなものが、自分の周りにあるうちに、もっと自分の幸せに感謝しないと。

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