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小野寺史宜「ひと」

2019年「本屋大賞」で2位になった作品らしい。

いっとき本屋でポップつきで平積みされているのをよく見かけたのだけれど、今更ながら読んでみた。

 

感想は難しい

感想は……難しいなぁ。

 

悪くはない。読みやすい。

ただ……Amazonレビューなどでは「いい人ばかりであたたかい気持ちになれる」みたいに評価されていたけれど、私は個人的に、「作為的ないい人」に受け取れちゃって、心の奥にもやもやが残った。

多分、私がひねくれているのだとは思うけど……けど……

 

(いや、主人公がいい人じゃないと言いたいわけじゃなくて、主人公をいい人に仕立て上げようとする作者の作為が強すぎて嫌だったということかなぁ。さだまさしの小説を読んだときみたいな「心の美しさがにじみ出ている」という感じが私は好きだな)

 

内容は

物語としては、

とってもシンプルに書くと、

相次いで両親を亡くした大学生が、大学を辞め、無気力になっていたところ、砂町銀座の惣菜屋さんに親切にしてもらい、そこで働き始め、少しずつ復活していく話。

 

たまたまなんだけど、ちょっと前に読んだ『線は、僕を描く』も両親を亡くして無気力になった大学生の話だったから、ついつい色々比較も入ってしまった。

『ひと』は両親を亡くした大学生の話≪日常編≫、『線は、僕を描く』は両親を亡くした大学生の話≪非日常編≫とも言えそう。

(ちなみに『線は、僕を描く』は『ひと』の一年前に本屋大賞にノミネートされ、3位になっている。同じ年だったらどうだったのだろう、なども気になった)

 

『ひと』は、両親が亡くなったり、親戚のおじさんに足元を見られて付きまとわれたり、そこは「大きな出来事」なのだけれど、あとは本当、とっても日常の日々が描かれている。

大したことの起こらない日常を、ちゃんと読ませる作品に仕上げるには力がいるから、そういう意味でこの作品はすごい。

 

キャラクターと文体

いいなと思ったのは、主人公の周りにいる人のキャラクター。

主人公の「いい人」っぷりは、作り物めいていて私は好きじゃなかったけれど、ちょっとだらしない同僚の先輩とか、タイプは違うのだけれど一緒にいて気づかれしない大学時代の友人とかは……描き方が良かった。

惣菜屋の店主も“あぁ、こういう人いそうだな”と思わせる人になっている。

  

それと、この作品の評価を高めている一番の要素は文体なんじゃないかと思う。

恐ろしく一文が短い。そこはものすごく徹底されている。

私も去年、インスタなどSNSで発信することが多かったから、文章を短くする大切さはとても痛感している。

活字離れが叫ばれる今、多くの人に読んでもらおうと思ったら、エンタメ作品は一文を短くした方がいいのだろう。

 

私は小説に「芸術」とか「美」をやっぱり求めちゃうから、一文を短くすべき、なんてことは思わないけれど、でも本当「多くの人に読んでもらおう」と思うなら、そこは気を付けて損はないポイントなんだろうな、と思った。

 

あと『ひと』の特徴としては、主人公の思考が多い。

これは人によって長所とも短所とも受け取れるかもしれない。

一つ一つの出来事に、いちいち細かい主人公の分析が入る。

それをうっとうしいと感じる人はこの作品の世界観が合わないと思うし、受け入れられれば、読んだ後も主人公のことが気になるようになるはず。

 

と、煮え切らない感想になってしまったけれど、読んでいるあいだは、なかなか楽しく味わえました。

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